歴史からみる「那須」の知られざる魅力。変わる姿と変わらない姿が合わさる場所

那須高原をはじめ、自然の名所に溢れている栃木県・那須町。本記事では、知る人ぞ知るディープな情報盛りだくさんで、那須の魅力にせまっていきます。

今回は、一般社団法人 那須町観光協会の林健(はやしけん)さんにインタビュー。那須町の歴史や「水」に関する観光スポットについてお話をうかがいました。

一般社団法人 那須町観光協会

林 健さん

鹿の導きで見つけられた温泉。現代も伝統行事が光る

「鹿の湯」の建物は昭和16年に改築され、現在そのままの姿を受け継いでいる。

──那須町には数々の温泉があるとのことですが、どのような特徴がありますか?

林 健さん(以下、林さん) 那須町のなかで最も歴史のある温泉は1300年以上続く「鹿の湯」です。

狩野三郎行広という者が山狩の際に、射損じて逃げる鹿を追って山奥に入ると、鹿は傷ついた体を温泉で癒していました。

そこで鹿によって発見された「鹿の湯」と名付けたと伝えられています。

また鹿の湯では、5月から11月の最終水曜日、11:00に「湯もみ」の体験や一般公開がおこなわれています。これは、温泉の成分を薄めずに湯を冷ますという伝統的な文化です。

「那須はよいとこ、後ろに茶臼」といった那須への想いが込められた唄を口ずさみながら「湯もみ板」を動かし、より入りやすいなめらかなお湯をつくります。

思わず目を奪われる、伝統行事「御神火祭」

毎年多くの参加者や来場者で賑わう。
激しく燃え盛る炎の前で、力強い太鼓の演奏が奏でられる。

──「那須温泉神社」についても詳しく教えてください。

林さん 那須温泉神社(なすゆぜんじんじゃ)では、毎年5月の最終日曜日に「御神火祭(ごじんかさい)」という伝統的な火祭りが開催されます。

那須は国内で最も大きな火山帯。かつて何度も噴火を繰り返しており、その山の怒りをしずめるために、無限地獄の火を起こし「御神火」として崇めるようになったと言われています。

御神火祭では100名ほどの人が松明(たいまつ)を持ち、大松明に着火。

その付近で太鼓の演奏がおこなわれます。その様子はかなりダイナミックで目を引くものがあります。

多くの人々を賑わせた「殺生石」の秘話

メディアやSNSでも大きな話題となった殺生石。
「九尾の狐が蘇るのでは?」などと思い思いに考察が繰り広げられていた。

──那須温泉神社の近くにある「殺生石(せっしょうせき)」についても教えてください。

林さん 殺生石は国指定名称史跡でもある溶岩で、「九尾の狐伝説」という伝説が残っています。

平安末期に九尾の狐が美女に化け、鳥羽上皇を殺害しようとした。それが陰陽師に見破られ、その後退治されて岩になったと言われているんです。

そんな殺生石は2022年3月、真っ二つに割れているのが発見され、慰霊祭並びに平和祈願祭を執りおこないました。

石には以前からひびが入っており、しみ込んだ水が凍るなどして割れた可能性が高いと言われています。

九尾の狐伝説があるだけに、数々のメディアで取り上げられるほど話題になりました。

また、2022年からは御神火祭の特別企画として、「コスプレ百鬼夜行」というイベントが始まりました。狐などに扮したコスプレイヤーの方々によって、那須温泉神社の辺りが華やかに演出されています。

四季折々の魅力をもつ「駒止の滝」の味わい方

四季折々の姿を魅せる「駒止の滝」。
変わりゆく周りの景色と、変わらない滝壺の美しさが魅力。

──「水」に関する観光スポットについてもご紹介いただきたいです。

林さん 日光国立公園内に那須第一の滝とも言われる「駒止の滝」があります。余笹川の断崖を真っ直ぐに落ちていて、吸い込まれるような雰囲気が魅力的な観光スポットです。

実は昔、この滝の存在は知られていたものの、周りの木々の落ち葉が落ち切らないと観ることができなかったそうなのです。

そんななか、「那須平成の森」が開園し、平成23年4月に滝を観るための「観瀑台(かんばくだい)」が設置され、それによって一望できるようになりました。

私も12月上旬に観に行き、ちょうど雪が降っていたので雪と共に滝を楽しむことができました。ある程度雪が積もると観瀑台が閉鎖されてしまうので、なかなか珍しい景色を観られて嬉しかったですね。

一方で、春から夏にかけては新緑から緑が深まっていく様子、夏から秋にかけては次第に紅葉していく様子を観ることができます。季節ごとに移り変わる木々の姿と、いつ行っても変わらぬ滝壺の美しさの対比に目を奪われるはずです。

「いつ、どんな人も魅了する那須を楽しんでほしい」

歴史的な観光地や伝統文化に加え、近代的な観光スポットも楽しめる。

──最後に、那須の楽しみ方のポイントを教えていただきたいです。

林さん 那須の魅力は幅広いので、本当にどのような方にも楽しんでいただけると思います。

グルメで言うと、やはり水が綺麗でとても美味しいのでお蕎麦屋さんが多く、那須町に20軒以上ございます。

ほかにも、那須の食材を使ったすいとんや、那須和牛もおすすめです。「那須和牛を食べるために来ました」という方もいらっしゃるくらいです。

楽しみ方は人それぞれ。温泉をメインに、素敵なお宿に泊まっていただくのはいかがでしょうか。

ほかにも動物園や遊園地、美術館などのレジャー施設もありますし、那珂川(なかがわ)の源流付近で体験できる「シャワークライミング」もおすすめ。那須アウトバックツアーズさんの提供で、川の流れに乗るプチスライダーや滝壺ジャンプなどを楽しめます。

那須へのアクセスは、東京方面から東北自動車道経由で約120分、新新幹線ご利用の場合は東京駅から那須塩原駅まで約70分でお越しいただけますので、ぜひお気軽に遊びに来てくださいね!

一般社団法人 那須町観光協会
〒325-0301 栃木県那須郡那須町湯本182
TEL:0287-76-2619

この記事の執筆者

志摩 若奈(しま わかな)

個人事業主として、取材や執筆、カウンセリングをおこなう。「自分と繋がる瞑想法®︎」を活用した、自己信頼や自己受容を育むセッションを提供中。お問い合わせはInstagramのメッセージまで。

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